003 初めての魔力充填(キス)

「お父さま?」

 余りに想定外の呼称に、オウム返しに聞いてしまった。

「はい。創造主マスターは私を創って下さいました。生みの親ですので…お父さまです。」

 また少しもじもじとしながら告げる。

 ルナは一見、感情の起伏が余り無いように思える。デフォルトの表情は無表情だ。

 だがこの子は俺と話す時、わずかながら顔をほんのり桜色に染め、恥じらい、熱い眼差しを向けて話す。あたかも女子中学生が初恋の憧れの先輩と接しているかのような、甘酸っぱい雰囲気を醸し出してくる。

 このような好意的な態度で接せられると、こちらも鼓動が早くなってしまう。

 やはりルナを精製する際、無意識に俺の理想の容姿と性格、そして俺を強く愛するように造ってしまったのだろう。自分好みの女性が自分を好いてくれていたら、それは最高な事だ。俺はそれを魔神の力で現実化してしまったのだ。人造精霊ドールの性格設定まで出来るのは、それこそ魔神からもらった全知全能の力のおかげだろう。俺は改めて感謝する。

「お父さまと呼ばれるの嫌…ですか?」

 目に薄く涙を浮かべて上目遣いで問いかけてくる。

「ああ…んー…。別に大丈夫だよ。」

 生返事になってしまう。異世界へ来る前はうら若き社会人だった俺だが、正直なところ美少女にお父さまとかパパとかお父さんとか呼ばれて慕われてみたい願望はあった。

「良かったです。」

 僅かだが口元が笑う。それだけで、周りに花が咲いたようだ。ルナは本当に美しい顔立ちをしている。なので、表情が少し変わっただけでもつい見惚れてしまう。

「ではお父さま…まず最初の魔力充填マナチャージをお願いします。」

 目を閉じ、くっと俺に向け唇を差し出すルナ。その顔はまたも赤くなっている。そういえば魔法書には人造精霊ドールの最初の魔力充填マナチャージはなるべく口腔粘膜で行い、そこで生体情報を交換、登録し合い創造主と人造精霊の主従契約パクティオーを結ぶように記されていた。

 そんな事を反芻している間も、ルナは目を閉じたまま無防備に俺に唇を差し出している。意を決してルナの細い肩を抱く。ピクンと可愛く反応するルナ。

 そして、ルナと唇を重ねた。俺達の身体が金色に光り輝き、しばらくして体内に収束する。光りが全て身体に入ると、体内に朧げにルナとの繋がりを感じるようになった。感覚が一部リンクしたような感じだ。主従契約パクティオーは無事完了した。

 唇を離すと、目の前にはうっとりし恍惚とした表情のルナがいた。  

「ルナの初めて…お父さまに捧げられて嬉しいです。ありがとうございます、お父さま。」

 顔を真っ赤にしながら、軽く俯いてはにかむ。その笑顔はとても可愛らしかった。

「ルナ、これから俺と外の世界を旅しよう。付いてきてくれるか?」

「はいお父さま。もちろんです。でも、それでしたら…。」

 ルナが言うには、もう何人か人造精霊ドールを精製しておいた方がいいとの事だ。万一、ルナが一撃で倒されるような強敵が現れた場合、直ぐ様俺をサポート出来る他の人造精霊ドールがいた方が何かと安心だという理由だ。

 確かにその通りなので、俺はあと二人の人造精霊ドールを造る事にした。もう精製の勝手も分かったので、スイスイと準備を整えていく。

 俺は二つ魔法陣を描き、ルナの時同様呪文を詠唱する。今度の二人はルナとはタイプの違う精霊にしよう、と大まかにだけ考えた。詳細設定は決めず、ランダムだ。

「来たれ!我が人造精霊ドール!」

 再び辺りが強い光りで覆われる。二人の人造精霊ドールが魔法陣の上に精製されていく。

 神々しい光の中で、人型の影が浮かび上がる。やがて、その姿がハッキリと見えてきた。

 二人目のドールは、灰色がかった蜂蜜色の銀髪アッシュゴールドのロング、水色の瞳、褐色の肌に派手な顔立ち、強い眼力と長い爪。どこからどう見ても黒ギャルだった。

 三人目のドールは、黒髪セミロングに黒の瞳。白い肌。清楚で日本のアイドルに居そうな雰囲気の娘だ。

 二人共、ルナと同じく外見年齢は十三才位と幼い。そしてこちらもルナ同様、頭部以外の体毛は一切・・見当たらなかった。

 二人が俺を目視し、確認する。すっと小ぶりな唇が動く。

「あなたがパパ?私、レイナ!よろしく!」

「…お父さんですか?私は響(ひびき)、響まゆです。」

 二人は魔法陣から降り立つと、全裸のまま俺の両サイドに寄り添い頬にキスし、直後に唇にも交互にキスしてきた。光りが三人を包み、主従契約パクティオーが成立する。

 ルナの時と比べ、余りのテンポの良さに面食らってしまう。

 レイナは褐色肌でも分かる位顔を真っ赤にして、ニコッと笑った。

「レイナのファーストキス、パパに貰ってもらっちゃった!」

 まゆはその白い顔をやはり真っ赤にしながら、恥ずかしそうにしている。

「お父さんにまゆの初めてのキスあげれた…。嬉しい…。」

 積極的な行動をするこの二人も、恥じらいの気持ちは持っているようだ。
 俺もまだ二人の人造精霊ドール精製から主従契約パクティオーまでが早すぎて気持ちが落ち着かないが、とりあえずルナ登場時と同様に二人共全裸なので服を出すように指示した。

「「了解!(です)」」

 元気に返事をし指を天に向け、レイナは赤い光り、まゆは青い光りに包まれ衣装を纏う。

 レイナは髪はストレートロングのまま。耳には数個の派手なピアス。爪は長く、ゴテゴテとした派手なネイルアートが施されている。

キラキラのアクセサリーが首元や手元に光り、マイクロミニの腹チラする夏のセーラー服からは、へそピアスも見える。足元はルーズソックスにローファーを履いている。

 まゆは髪はツーサイドアップにまとめ、頭には猫耳カチューシャを被っている。耳には数個の可愛らしいピアス、爪はピンクのジュエルとネイルアート。

ピンクの布地に黒のフリルでラインが入ったミニスカメイド服。胸は大きく開かれ谷間がよく見える。ノースリーブで背中も大きく開いているデザインだ。足はドレスと同系色のタイツ、ピンヒールを履いている。

 今ここに、服装がスク水、セーラー服、猫耳メイド服姿の十三才の美少女三人が出揃った。

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